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「山にコブシの花が咲いたとき、ゼンマイが採り頃なんだ。」

じいさんが昔から言っている言葉。

山に登らなくても、ゼンマイが出ているかどうかはコブシの花が教えてくれる。

今年は咲くのが遅い。去年までは5月のゴールデンウィークに咲いたので、連休中にゼンマイを採ることができたが、今年の連休はコブシが咲いていないため、ゼンマイ採りに行くことはなかった。

5月中旬、ようやく五頭連峰にコブシの花が咲いたので、親父と2人でゼンマイ採りに出かけてみた。




地元の山菜採り名人に会う

山道を歩いていると、同じ部落の山菜採り名人に出くわす。その名人もゼンマイ採りに来ていて帰る途中だった。

名人:「これからゼンマイ採りかぁ〜」

親父:「どこでゼンマイ採ってきた!」

名人:「2番沢だ」

今日は親父とその2番沢に行く予定だったが、先を越されてしまった。朝飯をゆっくり食べてから山に来たので、先を越されても仕方ないけど・・・


親父:「ゼンマイ立っているか?」

名人:「結構、立っていたぞ」

”ゼンマイが立つ”とはゼンマイが伸びすぎて旬を過ぎてしまったこと。


:「それじゃ、うちらは3番沢に行くか!それにしても名人の背負ってるゼンマイ軽くねぇか?」

名人:「お前と違って若くねぇから、もうそんなに背負えねんだ」

:「そっか。軽いそうだから、もうゼンマイは終わったと思ったよ!」


山菜採り名人と別れ、ゼンマイが採れる3番沢に行ってみよう。




ゼンマイ採りの3番沢

3番沢まで山道の急坂を歩いて1時間、ようやく3番沢に着く。

3番沢とは、地図上の沢の名前ではなく、山道を歩いて3番目にゼンマイが出る沢のこと。

3番沢を着くと今年は雪が多い。去年なら雪渓はほとんど見れなかった。

しかし、雪渓が多いと、去年は採ることができなかった手の届かないゼンマイも今年は雪渓のおかげで簡単に採ることができる。

雪渓が多い=太い極上ゼンマイを採るチャンス。

さーて・・沢を下ってゼンマイでも採っか!




ちょうど採り頃

沢を下ると、ちょうど採り頃のゼンマイ畑が広がる。

ちょうど採り頃のゼンマイとは、ゼンマイの綿が取れるか取れないかがちょうど採り頃。

この写真のゼンマイもあと3日もすれば綿がなくなる。今がまさしく旬のゼンマイだった。




オスゼンマイ

ゼンマイは株になっていて、その株からオスゼンマイと呼ばれる胞子葉と、光合成を行うためのメスゼンマイの2種類が株から出ている。

ゼンマイを採るときは、オスゼンマイは採ってはいけない。オスまで全部採ったらどうなるか?

株が死んでしまい、翌年からはゼンマイが出なくなる。

他に、オスゼンマイは固くて美味しくないばかりか、乾燥させたゼンマイにオスゼンマイが混じると、虫が沸いて食べれなくなるという・・・




メスゼンマイ

こちらが光合成を行うゼンマイ。これをメスゼンマイと呼ぶ。

採るのはメスゼンマイのみ。

大きな株だと、オスゼンマイが2〜3本、メスゼンマイが4〜5本出る。

これも採り方があって、メスを全部採ってしまうと翌年のゼンマイは細くなってしまうので、1〜2本はメスも残すように採らなければいけない。




ゼンマイの他には・・・

五頭連峰はゼンマイだけでなく、山ウドも多く出ている。

ウドは生でも食べられる山菜でもあるが、私の家ではウドを塩漬けにして冬の保存食にしている。

塩漬けのウドは茎を食べるので、写真のウドよりも、もう少し伸びたウドを好んで採っている。




斜面に出ているゼンマイ

ゼンマイは渓流沿いの岩斜面に出ている。そのような崖のところでは掴む木も生えていなく、採るのは危険を伴う。

山菜の中でも最高級の価値のある山菜であるが、このような危ない場所に出ているからこそ、ゼンマイの価値を高めているのだろう。




極上のゼンマイ

誰も採ったことないゼンマイは株も大きく、しかもデカイ。

ゼンマイは根元にいくほど固く、食べても繊維が口の中に残ってしまうので、やわらかい部分のみ採っていく。

写真のゼンマイなら、先から25cmくらいのところまでは美味しく食べることができるだろう。




欲張り親父

田舎の山菜採り名人も、親父のことを「あいつは猿だ!」と呼ぶだけあって、ゼンマイを採る身のこなしはさずがだと感心してしまう。

「そこにいいゼンマイがあるから、お前が採って来い」

と親父に言われることがあるが、その場所を見ると・・・俺にはとても無理だ。

親父が「しょうがねぇなぁ〜」と言いながら崖を登るが、そんな足を広げてゼンマイを採るなんて、俺にそんな芸当ができるはずがねぇだろ!と叫びたくなってくる。




ここからが大変

ゼンマイは採ってからがまた一苦労。

採ったゼンマイはすぐにゼンマイの綿を取り、それをその日のうちに茹でないとダメなのである。

ゼンマイ採りは若い者の役割だが、ここからは祖父・祖母の出番である。

「いや〜太いゼンマイだのぉ。」

とじいさんが言うが、うちらは昔から細いゼンマイは採っていないんだけどなぁ




ゼンマイの茹で具合

「ゼンマイの茹で具合はどれくらいなんですか?」

と聞かれることが多いが、ゼンマイの茹で具合はゼンマイがくるりと1週出来ればいい。

茹でが足りないとゼンマイが裂ける。あまり茹で過ぎると、ゼンマイを揉みながら干すときにゼンマイが切れてしまうという。




ゼンマイを茹でる

1度に何十キロもゼンマイを採ってくるので、ゼンマイを茹でるときは鍋ではなく釜で茹でる。

茹で上がったら、すぐにムシロの上に広げて冷まし、荒熱を取ります。

ここまですれば、今日のゼンマイ作業は終わりです。


「明日から天気いいからゼンマイも早く乾くなぁ〜」とばあさんが言う。

完全に乾燥させるまで3日は掛かる。それもゼンマイを揉みながらゼンマイの繊維をほぐし、乾燥させる。

ゼンマイは採ってくるのも苦労するが、揉みながら乾燥させるのもまた一苦労。

これだけ手間が掛かる山菜はゼンマイだけなので、他の山菜よりも価値が違うのもうなずける。




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